不動産を売買する時は、原則として所有者である売主と買主の両方について、本人の立ち会いが必要となります。
ですが、やむを得ない事情があり、売買契約や残代金の受け渡しの時に、本人が立会いできないというケースもあるでしょう。
そのような時は代理人に依頼することによって、本人の代わりに売買の手続きをすすめることができるのです。
特に売主側が不動産を売却する時に、代理人に依頼するよくあるケースや注意点について解説します。
目次
不動産の売却手続きを代理人に依頼・よくあるケース
不動産の売主本人が代理人に委任する事情には次のようなケースがあります。
- 売却する不動産が遠方にある
- 契約手続きの時間を確保できない
- 入院中や施設入所で外出が難しい
- 共有者が複数いる不動産の売却
売却する不動産が遠方にある
例えば空き家になった実家を売りたい場合など、今の住まいから離れた場所にある物件を売却するケースがあります。
所有者が海外移住しているようなケースも、本人が売却手続きをするのはハードルが高いでしょう。
契約手続きの時間を確保できない
仕事や育児、介護などの理由で忙しく、契約や残金受け渡しに立ち会う時間が取れない方にとっても代理人への依頼がおすすめといえます。
不動産を売却現金化するまでには、重要事項説明や契約内容の確認などで、相応の労力と時間がかかります。貴重な時間や労力をお金で買うのも一つの手段といえます。
高齢・体調不良などで契約に立ち会えない
家の所有者が高齢で老人ホームなどに入居していたり、長期間入院しているなど外出がままならないケースでも、売買契約に立ち会うことは難しいでしょう。
共有者が複数いる不動産の売却
相続などにより所有者が複数になっている場合は原則、所有者全員の立ち会いと同意が必要です。共有者が多くなるほど、日程を調整するのが難しくなります。
共有の不動産を売るため、手続きは代表者一人に頼むことで、所有者全員の立ち会いを不要にすることができます。
例えば、離婚により夫婦の共有名義で購入したマイホームを手放す場合、代理人に依頼することで、お互いに顔を合わせずに売却をすることができます。
代理人にお願いするには代理権委任状が必要
不動産の売却を代理人にお願いする場合、代理権を証明するために委任状を作成することになります。
この委任状により、代理人が不動産売買契約についての代理権を持っていることを証明することができます。
また、代理人による不動産売買契約で、どこまでの事をお願いするのかをはっきりさせることができます。
委任状の記載項目と内容
委任状の記載内容については、特に法律で決められてはいません。
所有者本人の意向のとおりに売却を進めるためには、代理人にお願いする具体的な内容を、明らかにしておく必要があります。
以下の項目を明確に記載することが重要です。
委任の内容は不動産の売却を代理人に委任することです。
売買対象の物件について表にまとめました。
項目 | 記載内容 |
土地 | 所在地、地目、番地、地籍 |
建物 | 所在地、家屋番号、構造、床面積 |
所有者 | 氏名、住所 |
売却の条件や委任する内容は代理人にお願いする時点ですでに決まっている売却条件や委任する内容を記載します。
- 売買価格
- 手付の額
- 物件引き渡しの予定日
- 違約金の額
- 固定資産税の分担起算日
- 売買代金の受け取り方法
- 登記申請手続き
委任状に取り決めがない事項は、委任者と受任者がその都度話し合いで決める旨を明記しておきます。
有効期限は取引が成立しなかった場合も考えて有効期限は3ヶ月程度を目安に決めておきます。
委任者と受任者双方が住所・氏名を記載し、それぞれ実印を押印しておくと安心でしょう。
委任状のほかに準備する書類
代理人に売却手続きを委任する場合は、委任状のほかにも必要な書類があります。
委任者 | ・印鑑証明書(3ヶ月以内のもの) ・実印 |
代理人 | ・印鑑証明書(3ヶ月以内のもの) ・実印 ・本人確認書類(運転免許証などの写真付き身分証明書) |
委任状の内容について確認すべきこと
委任状を利用した売買契約は、委任者(所有者本人)が契約をした場合と同じ効力を持ちます。
委任状に署名捺印をする際には、委任の範囲や記載されている内容に間違いがないか、ご自身でしっかり確認をしてください。
委任状に不備がある場合は、契約を進められなくなり、買主にも迷惑をかけてしまいます。
委任状は必ず写しを取って、いつでも確認ができるように保管しておきましょう。
不動産の売却手続きを代理人に依頼する時の注意点
不動産売却を代理人にお願いする時の注意点を事前に確認しておいてください。
- 信頼のおける人物かどうか?(基本的には専門家に依頼する)
- 司法書士の確認は代理人を通じてではなくて、必ず本人への直接確認が必要
- 司法書士には本人の売却意思についても直接確認を求められる
大切な取引を任せることになるので、信頼できる人であるのは勿論、不動産取引経験のある人にお願いするのがよいでしょう。
契約や残代金の受け渡し立会いを代理人にお願いする場合でも、司法書士による本人の確認と意思確認は必ず本人に直接確認することが必要で絶対に避けることはできません。