相続する財産のなかに株式がある場合は、不動産の名義変更のように、株式の名義を変更する必要があります。
株式の名義変更は、相続財産の中の株式が上場会社の株式か非上場会社の株式かによって手続きが変わります。
ここでは、株式の相続について手続きの流れと必要書類、税金についても解説します。
目次
株式には上場株と非上場株の2種類がある
株式には上場株と非上場株の2種類があり、それぞれで調査方法が異なります。
上場株式の場合は、相続手続きの方法は窓口の証券会社に問い合わせすることになります。非上場株式の問い合わせ先は、株式の発行会社になります。
まずはどこに何の株式をどれだけ保有しているのかを調査することが重要になります。非上場株式は相続した後の売却が難しい場合もあります。
上場株式を相続で名義変更する手続きの流れ
上場株式の名義変更をするためには、まずは手続き先の窓口は、どこになるのかを把握しなければなりません。上場株式については、証券会社や信託銀行が株式を管理しています。
通常は、証券会社などから定期的に送られてくる「取引残高報告書」などの郵送物で取引先を知ることができます。
どの証券会社で取引をしていたのかが全く分からない場合は「証券保管振替機構(ほふり)」に問い合わせることで故人が口座を開設した証券会社がどこなのかが分かります。
情報の開示に必要な物は下記のとおりです。
- 開示請求書
- 被相続人の戸籍謄本、戸籍の附票
- 法定相続人の戸籍謄本、本人確認書類
これらの書類を証券保管振替機構(ほふり)に送って手数料を納付します。
判明するまでには、長ければ1~2か月かかることがあります。
次に、故人が利用していた証券会社や信託銀行に相続が発生した日付の残高証明書を発行してもらいます。それにより株式の銘柄・株数・評価額が判明します。
その内容をもとに、相続人間でどのように分けるのかを検討します。
上場株式を引き継ぐことになった相続人は、それぞれ全員が故人の開設していた証券会社と同じ会社に口座を開設することになります。
上場株式の名義変更に必要な書類
上場株式の名義変更とは、故人と同じ証券会社に相続人が口座開設をして、株式を故人の口座から引き継ぐ相続人の口座に移管することを指します。
必要な書類の一般的なものは以下のとおりです。
- 株式名義書換請求書
- 取引口座引き継ぎの念書(証券会社所定の様式)
- 相続人全員の同意書(証券会社所定の様式)
- 相続人全員の印鑑証明書
- 被相続人の生まれから亡くなるまでの連続した戸籍
- 相続人の戸籍謄本
- 遺産分割協議書
上記の書類を揃えて、証券会社に提出します。
上場株式の名義変更にかかる税金と株式の評価方法
上場株式を相続で名義変更した場合に税金がかかるとすれば、それは相続税です。
相続税は、亡くなった人の財産が下記を超える場合にかかる税金です。
3000万円+(法定相続人の数×600万円)
上場株式の評価の方法は以下の4つのうち、最も安い価格で評価することができます。
- 死亡日の最終価格
- 死亡日の属する月の毎日の最終価格の月平均額
- 死亡日の属する月の前月の毎日の最終価格の月平均額
- 死亡日の属する月の前々月の毎日の最終価格の月平均額
非上場株式を相続で名義変更する手続きの流れ
相続財産に非上場株式がある時は、まず発行会社に問い合わせをします。
手続きに必要な書類は、基本的には上場会社の場合と同じです。
相続によって名義書換が完了しても、多くは売却することに制限があることあります。
発行会社に買い取ってもらえないかを確認するとよいでしょう。
非上場株式の名義変更にかかる税金と株式の評価方法
非上場株式も相続税の対象となります。そのため1株がいくらになるのかが重要です。
上場株式の株価は、インターネットなどで簡単に調べられますが、非上場株式の株価の計算はどうなるのでしょうか?
非上場株式の相続税の評価方法は、以下の3種類があります。
- 純資産価額方式
- 類似業種比準方式
- 配当還元方式
①「純資産価額方式」は、会社を廃業すると考えた場合の株主1人あたりの分配金の額を基準にして株価を算出します。
②「類似業種比準方式」は、業種が同じか似ている上場会社の株価を基準にして評価する方法です。
③「併用方式」は「純資産価額方式」と「類似業種比準方式」を組み合わせて、いずれも会社の純資産(簿価)や前期1年間の取引額など、さまざまな要素を考慮して判定します。
非上場株式の場合は、計算が容易ではないため、一般的には、会社の会計を依頼している税理士に計算してもらいます。
株式の名義変更をする際の注意点
まずは、税務申告が必要かどうかについては下記の2点に気を付けましょう。
①株式を含めた遺産の総額が相続税の基礎控除を超える場合は相続税申告が必要になります。相続税は亡くなった時から10か月以内に申告納付という期限があります。
②故人が亡くなる前に株式などの売買をしていた場合は、亡くなってから4カ月以内に準確定申告が必要になることがあります。
故人の証券口座が「特定口座(源泉徴収あり)」の場合は、準確定申告は不要です。
一般口座の場合で、売却益があり申告未了のケースでは準確定申告が必要になります。
相続手続き後に故人が持っていた株券が見つかった場合
相続手続きを完了した後に、故人が持っていた株券が見つかった場合はどうすればよいのでしょうか?
相続税がかかる方の場合、申告期限から5年以上経過しているときに見つかった場合は、修正申告の必要はありません。ただし虚偽申告や財産隠しといった不正行為がある場合の時効は7年と長くなります。
5年経過以前に株券が見つかった場合は、相続税の修正申告が必要になります。
税務調査で指摘され、修正申告した場合は過少申告加算税の対象となり追徴となります。
今では、上場企業の株式は電子化されていますが、電子化以前に取得した株式で、電子化の手続きがされていない株式は、株券のまま眠っていることもあります。
電子化手続きがされなかった株券は、管理している信託銀行で相続手続きをしなければなりません。株券の発行会社に管理している信託銀行を確認して進めてください。
相続した株式を売却した場合は、利益があれば所得税・住民税がかかります。株式の売却益にかかる所得税・住民税は一律で20.315%です。
株式の売却益は、「売却金額-売却手数料-取得費」です。
取得費とは「故人が取得した金額」です。
相続税の申告期限から3年以内に株式を売却した場合は、「売却した株式に対する相続税額」を取得費として加算できる特例があります。
故人が取得した金額が不明の場合は、「売却代金の5%」を取得費とすることができます。この場合は「売却益は売却代金の95%」となり、高額の所得税がかかります。