遺産相続で負担になるのが「戸籍謄本を集める作業」です。
膨大な量の戸籍謄本を相続手続きのたびに窓口に提出するのは大変でした。
そんな手間を省いてくれるのが、亡くなった人の相続人を簡単にわかるようにまとめたのが「法定相続情報一覧図」です。
相続手続きの場面で、戸籍謄本の代わりに使用できます。
便利な法定相続情報一覧図の書き方から交付までの手順について、司法書士が解説します。
目次
法定相続情報一覧図とは相続人の一覧に法務局が認証をしたもの
法定相続情報一覧図は、亡くなった方の相続人を一覧にした家系図のようなものです。
集めた戸籍謄本を法務局に提出することにより法定相続人が誰であるのかを法務局の登記官が認証してくれます。
法定相続情報一覧図があると複数の銀行の解約や登記を同時に進められる
法定相続一覧図は法務局で複数発行が可能です。
法務局や銀行など手続き先のかず分の一覧図を発行してもらえば、同時に登記や預金解約手続き、相続税申告などをすすめることができて相続手続きの時間短縮ができます。
提出される各窓口側でも戸籍の束をいちいちコピーして読み解く必要がなくなるため手続き時間が圧縮できるというわけです。
法定相続一覧図をあえて作らなくてもよいのは戸籍の提出先が少ない場合
遺産が銀行口座一つだけというように相続手続きが少ない場合は、あえて法定相続情報証明制度を利用する必要はありません。
役所で被相続人と相続人の戸籍謄本を集めて、それを提出すれば相続手続きができます。
法定相続情報を作るためには集めた戸籍を法務局に一度すべて提出して申請するひと手間があります。
それをしても後の手続きが楽になる場合でなければ、わざわざ一覧図を作る必要はないでしょう。
有効期限は原則ないが提出先による
法定相続一覧図には原則有効期限はありません。
ただ、銀行や証券会社など届け出先によっては、3か月や6か月など有効期限を設けている場合もあります。
手続きに時間がかかると予想されるときは事前に確認しておきましょう。
法定相続情報一覧図じたいの発行手数料は無料
法定相続一覧図の発行手数料は無料です。
ただし必要な戸籍謄本の取り寄せや法務局への申請を司法書士などに代行依頼する場合には難易度により1~10万円ほどの手数料がかかります。
法定相続情報一覧図は5年間再発行が可能
法定相続一覧図は作成から5年間の間は証明書の再発行が何度でも無料で可能です。
手続き漏れが後日判明した場合にも利用できるので便利です。
法定相続情報一覧図作成の準備と手順
法定相続一覧図の具体的な作成方法は次のとおりです。
- 必要書類を集める
- 法定相続情報一覧図」を作成する
- 「申出書」に記入する
④ 申し出先の法務局を調べて持参か郵送する
必要書類を集める
以下の書類を集めます
- 被相続人の出生時から死亡時までのすべての戸籍謄本、改正原戸籍謄本、除籍謄本
- 被相続人の住民票の除票(除票を取得できない場合には戸籍の附票)
- 相続人全員分の戸籍謄本または戸籍抄本
- 申出人の氏名・住所を確認できる公的書類(免許証、マイナンバーカード、住民票の写しなど)
「法定相続情報一覧図」を作成する
被相続人(亡くなられた方)及び戸籍の記載から判明する相続人を一覧にした図を作成します。
主な法定相続情報一覧図の様式及び記載例を掲示しますので,参考にしてください。
相続税申告に使う場合は子の続柄の記載に注意が必要です。
具体的には、戸籍の続柄の記載と同じく、「長男」「長女」「養子」と記載します。
ちなみに、二番目の男子は正しく「二男」と記載します。
また、上記見本のように図形式のみが利用可能で列挙式は利用できません。
相続放棄・欠格・廃除がある場合の書き方
相続放棄者、相続欠格者、相続廃除された人がいる場合は法定相続情報一覧図の書き方は次のようになります。
- 相続放棄者・相続欠格者
氏名、続柄などを記載する(相続放棄したことや欠格者であることは記載しない)
- 相続廃除された人:記載しない
これらの人は遺産を相続できません。
法定相続一覧図の書き方に違いがあるのは放棄や廃除の事実が戸籍に記載されるかどうかと同じ扱いとなっています。
数次相続の場合は2つの一覧図に分かれる
数次相続とは相続発生後、遺産遺産分割が未了のうちにさらに相続人が亡くなったような場合をいいます。
その場合には、法定相続情報一覧図は亡くなった人ごとに作成しなければなりません。
2回相続がおきている場合は2枚作成するということです。
3代4代に渡って相続になっているときは亡くなった人ごとに別々の一覧図が必要となりかなり面倒なことになります。
「申出書」に記入する
法定相続情報一覧図の保管及び交付の申出書記入見本の記入見本
ではひとつひとつ細かく見ていきましょう。
- 申出人の氏名、住所、連絡先及び被相続人との続柄
申出人を複数の相続人とするにことも可能です。
申出書に別紙つけて申出人の住所氏名などを列挙します。 - 代理人の表示
申出をご自身でするため記入不要です。 - 利用目的
該当項目にチェックを付けます。 - 必要な通数・交付方法
相続登記や、預金解約、相続税申告など提出先を見積もり少し多めに依頼すると安心でしょう。
窓口受け取りも郵送交付もどちらも可能です。 - 亡くなられた方の不動産があるときは、不動産番号または所在を登記簿どおりに書きます。
不動産が複数ある場合には、そのうちの任意の一つを記載します。
申し出先として不動産の所在地を管轄する法務局を選んだ場合はその法務局の管轄区域内の不動産について書きます。 - 申出の年月日
申出の年月日が一覧図の写しの作成基準日となります。
窓口提出の場合は提出日を記載します。
郵送の場合は、法務局が申出書及び添付書面を受領した日が申出日となりますので空欄にします。
申し出先の法務局を調べて持参か郵送する
申し出をする法務局は下記の中から都合のよい所を選びましょう。
- 亡くなった方の死亡時の本籍地
- 亡くなった方の最後の住所地
- 申出人の住所地
- 亡くなった方名義の不動産の所在地
郵送の場合は返信用の郵便切手や封筒(レターパック可)を一緒に提出します。
交付までにかかる期間は1週間ほど
申し出から一覧図の写しが交付されるまでの期間はおおむね1週間ほどです。
この期間は提出先法務局によって時期によっても変わります。
法定相続情報一覧図の保管期間は約5年再交付が可能
法定相続情報一覧図は,5年間(申出日の翌年から起算)保存されます。この期間であれば何度でも再交付を受けることができます。再交付手数料も無料です。
ただし再交付申請ができるのは、最初に申し出をした人に限ります。他の相続人が再交付申し出をする場合は委任状が必要です。