公正証書遺言を作成するためには、遺言書を作成する人・財産を受け取る人・相続財産に関する書類が必要になります。
公正証書遺言の作成を検討している方へ、必要な書類と取り寄せ方法について解説します。公証役場で打ち合わせしたり、司法書士等に作成のサポートを依頼する前に知っておくとスムーズに進めることができますので、ぜひ参考にしてみてください。
公正証書遺言の必要書類は「人」と「財産」の大きく2種類ある
公正証書遺言の必要書類は、大きく分けて2種類あります。
1つめは「人」に関する資料で、財産をあげる人(遺言者)・財産を受け取る人(受遺者)・遺言執行者を確認するための書類です。
2つめは「財産」に関する資料です。遺言者自身が財産を把握するためだけでなく、公証役場の手数料の計算にも必要になります。手数料は、遺言の目的とする財産の価額に応じて定められています。
あげる人、受け取る人、遺言執行者に関する書類の取り寄せ方法
公正証書遺言作成時の必要書類と取り寄せ方法は、以下のとおりです。
自分で用意できる書類と、場合によっては受遺者になる方に用意してもらわなければいけない書類もありますので、確認しておきましょう。
【財産をあげる人(遺言者)の必要書類】
- 戸籍謄本
- 本人確認書類(マイナンバーカードまたは印鑑登録証明書)
※公正証書原本への押印は、マイナンバーカードを提示する場合は認印、印鑑登録証明書を提出する場合は実印となります。印鑑登録証明書の原本は、返却可能です。
【財産を受け取る人(受遺者)の必要書類】
- 受遺者が相続人の場合
遺言者と相続人との関係性がわかる戸籍謄本(遺言者の戸籍謄本に相続人の名前が記載されている場合は不要) - 受遺者が相続人以外の場合
住民票等氏名、住所、生年月日のわかるもの
※受遺者が法人の場合は、その法人の登記事項証明書または代表者の資格証明書が必要です。
【遺言執行者の必要書類】
- 遺言執行者になる方の住所、氏名、生年月日、職業を書いたもの
※遺言執行者が法人の場合は、その法人の登記事項証明書または代表者の資格証明書が必要です。
財産に関する書類
財産に関する書類は以下になります。
- 不動産の登記事項証明書(登記簿謄本)
- 固定資産税納税通知書または固定資産評価証明書
- 預貯金の銀行名と口座番号を特定できるもの(通帳やアプリ画面など)
- 株式の証券会社と口座番号を特定できるもの(郵便物やアプリ画面など)
- 公正証書遺言作成時における預貯金や株式の総額を書いたメモ
必要書類の集め方
遺言者自身の戸籍謄本はすぐに取得できますが、受遺者に戸籍謄本を取得してもらうことが難しい場合、遺言者と受遺者が兄弟姉妹であれば、遺言者が原戸籍を取得することで受遺者と同じ戸籍に入っていることが確認できます。
兄弟姉妹の子(甥姪)が受遺者になる場合でも、原戸籍から兄弟姉妹の子として記載できる場合もありますが、受遺者を明確に特定できないために戸籍謄本が必要になるケースもあります。
相続人以外が遺産を受け取る場合に必要な住民票も受遺者に取得していただくことになりますが、兄弟姉妹や甥姪の戸籍謄本取得と同様に、遺産を受け取る可能性があることを生前には知られたくないと考える遺言者も多く見受けられます。このような場合、提出できる必要書類をふまえて公正証書遺言の書き方を公証人と打ち合わせる必要があります。
不動産の登記簿は、最寄りの法務局で取得できます。公正証書に不動産の表示を正確に記載するために必要です。
固定資産税納税通知書は、その年度のものが毎年5月頃に自宅に届きます。記載されている評価額を手数料の計算に用いるため、通知書を紛失した場合は、再発行を依頼するか、不動産の所在地の市区町村役場で固定資産評価証明書を取得します。
預貯金については、公正証書遺言作成時の財産総額のメモで良いので金額がわかる書類は提出しませんが、必要書類を集める際にご自身の財産を把握するためにも通帳やカードなどを整理しておくと良いでしょう。
特に、通帳がなくアプリで管理している口座は、スマホが開けないと確認できなくなってしまいます。保有している銀行口座や証券会社の口座を一覧にしておくことは、自身の亡き後、遺言執行者にスムーズに手続きしてもらうことにも繋がります。
まとめ
公正証書遺言を作成するには、大きく分けて「人」に関する書類と「財産」に関する書類の2種類を準備する必要があります。「人」に関する書類としては、遺言者本人の戸籍謄本や身分証明書、受遺者の戸籍謄本や住民票、遺言執行者の基本情報などが求められます。
相続人以外に遺贈する場合は、住民票や法人の登記事項証明書が必要になるケースもあります。「財産」に関する書類では、不動産の登記事項証明書や固定資産評価証明書、預貯金や株式の口座情報などが必要となります。
これらの情報は、公正証書の記載内容や公証役場での手数料算定にも関係します。必要書類は早めに取り寄せ、公証人や司法書士との打ち合わせに備えておくと、スムーズに遺言作成を進めることができます。