• TOP
  • 相続手続き
  • 不在者財産管理人とは|音信不通の相続人の対処方法や費用、期間について司法書士が分かりやすく解説

不在者財産管理人とは|音信不通の相続人の対処方法や費用、期間について司法書士が分かりやすく解説

相続人の中に音信普通の行方不明者がいる場合の遺産分割協議はどうしたらよいのでしょうか?
遺産分割協議は相続人全員が同意しないと話がまとまらず相続手続きを進めることができません。

相続人が一人でも音信不通で行方知れずになっている場合、遺産分割協議を行うことができません。
その場合に行方不明の相続人に代わって遺産分割協議に参加するのが不在者財産管理人です。

本記事では、音信不通の相続がいる場合の対処方法やかかる費用と期間について解説いたします。

不在者財産管理人とは行方不明者の財産を管理する人のこと

行方不明者の財産を管理する不在者財産管理人はなぜ必要なのでしょうか?
不在者自身や不在者の財産について、利害関係がある人(例えば家族)の利益も保護する必要があるためです。

たとえ行方不明者であっても相続人としての権利があり、その人を除外して遺産分割協議をすることはできません。

不在者財産管理人を選任してもらうことによって、相続人の中に不在者がいても、遺産分割協議をしたり不動産の売却をすることができるのです。

相続人が見つからない対処方法は不在者財産管理人制度と失踪宣告の2つ

「不在者財産管理人」と「失踪宣告」は、いずれも相続人に行方不明者がいて、そのままでは相続手続きを進められない場合の対処方法です。
この2つにはどんな違いがあるのでしょうか?

不在者財産管理人は不在者が生きていることを前提に不在者の代わりに財産を管理する人を選ぶことを指します。
他方、失踪宣告は不在者が亡くなったものとみなして手続きを進めます。

そのため実務では、失踪宣告よりもまずは不在者財産管理人制度の利用を検討するのが通常です。

不在者財産管理人制度は、土地等の管理や保存をする管理人を選ぶこと

不在者財産管理人が必要になる場面は主に以下の2つです。

  • 遺産分割協議への参加
  • 不動産の売却

相続手続きで土地の登記や預金解約をする際に遺言書がなければ、相続人全員での遺産分割協議が必要になります。
しかし、相続人である行方不明者を除外しての遺産分割協議はできないため不在者の替わりに不在者財産管理人が遺産分割の話し合いに参加します。

また、共有の不動産の名義人に行方不明者がいる場合も不在者財産管理人が不在者の代わりに売却手続きができます。
詳しくは下記の章、「不在者財産管理人が無事選ばれたあとの遺産分割協議の内容には縛りがあるに記載しております。

なお、不在者財産管理人は、家庭裁判所の監督のもとに遺産分割協議や売却を進めなければなりません。

失踪宣告とは法律上亡くなったものとみなす制度

行方不明者がいつか帰ってくることを前提とした不在者財産管理人に対して、
失踪宣告は、生死が不明の行方不明者を法律上死亡したものとみなす強力な制度です。

失踪宣告には次の2つの種類があり亡くなったとみなされる時期について違いがあります。

  • 普通失踪

生死不明になってから7年間経過後に亡くなったとみなされる

  • 特別失踪

戦争や震災、船舶の沈没などの危難に遭遇した者の生死が、危難が去った後1年間不明であれば危機が去った時に亡くなったとみなされる。

多くの場合は普通失踪ですので7年以上行方不明であることが申立の条件となります。
どちらも利害関係人が家庭裁判所に申立をすることができます。

なお、行方不明者がいて遺産分割協議ができない相続人は、利害関係人にあたるため申立をすることができます。

不在者財産管理人を使うための条件は、長期間の行方不明と管理人がいないこと

長期間の行方不明とはどのくらいの期間を指すのでしょうか?
少なくとも1年以上行方不明である必要があります。
数か月連絡が取れないくらいでは、不在者とは言えません。

申立するためには住民票のある住所にいないだけでなく手を尽くしても、全く連絡がとれない状態が数年続いている必要があります。

不在者に管理人がいると想定されるケースは以下のようなものです。

  • 不在者が未成年者で親権者がいる
  • 不在者が認知症などの理由で成年後見人がいる
  • 不在者が専門家や友人などと財産管理委任契約を結んでいる

不在を証明するために必要な住所調査と現地調査

不在の事実を証明するとはどうすればよいのでしょうか?
具体的な方法の例としては下記のとおりです。

  • 戸籍や住民票など公的書類を取り寄せて住所地を確認する。
  • 不在者宛の郵便を送付して(あて所に尋ねあたりません)のスタンプを押されたものを受け取る。
  • 住所地を訪ね、本人の家族、近隣の住民、地域の民生委員など行方を知っていそうな人を全てあたって話を聞き調査報告書にまとめる。
  • 空き家の場合には建物や表札、ポストなどの写真を撮影する。
  • 警察へ行方不明の届け出を提出して証明書をもらう。

この証明書類はなるべく多く準備するのが良いでしょう。

不在者財産管理人になれる人は利害関係のない第三者か専門家

不在者財産管理人にはだれがなるのでしょうか?
不在者財産管理人には弁護士や司法書士などの特別な資格は必要ありません。

申立の際に、相続人ではない親族などを候補者とすることも可能ですが、実際のところ最終の決定権は家庭裁判所にあります。

多くの場合、専門家である弁護士や司法書士が選ばれることになります。

不在者財産管理人が決まるとできる遺産分割協議や不動産の売却

不在者財産管理人が決まると、遺産分割協議や不動産の売却をすることが可能になります。
しかしそのためには、まず不在者自身の財産をすべて調査して財産目録を作成することからはじめなければなりません。
不在者が預貯金、有価証券、不動産など様々な財産をもっている場合には調査に時間がかかります。

不在者財産管理人が無事選ばれたあとの遺産分割協議の内容には縛りがある

やっと不在者財産管理人が選ばれて遺産分割協議や不動産売却が進められるとなっても、その内容は不在者に不利な分割や売却はできません。
この点を理解して申立をすることが重要です。

前述のとおり、不在者財産管理人はあくまでも家庭裁判所の監督を受けながら、不在者の財産を確保する使命のもとに仕事をします。
そのため、遺産分割や不動産の売却の場面では家庭裁判所の許可を得なければなりません。

具体的には家庭裁判所に下記の書類を提出して許可を求めなければなりません。

遺産分割の場合

  • 遺産目録
  • 目録記載の財産について裏づけ証拠として
  • 預金残高証明書、不動産登記事項証明書、株式評価証明書など
  • 遺産分割協議議書の案

不動産売却の場合

  • 不動産登記事項証明書
  • 不動産の固定資産税評価証明書
  • 不動産業者作成の査定書

家庭裁判所は、書類の内容を精査して不在者の権利が保護されているかどうかの確認をします。
そのうえで遺産分割や売却の許可を出すのです。

法定相続分の遺産を不在者に確保することや、不動産が不当に低い金額で売却されないことをチェックされることとなります。

不在者財産管理人にかかる費用は手続き分と予納金

不在者財産管理人を利用する場合の費用がどのくらいかかるのでしょうか?
かかる費用は大きく次の2つです。

  • 申立て手続に必要となる費用
  • 予納金

申し立て手続に必要となる費用

申立て手続きに必要となる費用で、下記のような提出書類の実費は数千円程度ですが、
申立書の作成や提出を専門家に依頼する場合は別途報酬(多くは10万円前後)がかかりますので、依頼する先に事前に確認しましょう。

  • 収入印紙800円分
  • 連絡用の郵便切手(切手の金額は各裁判所に要確認)
  • 戸籍謄本や住民票 

予納金

不在者の財産が少ししかない場合や、不動産などの処分しなければ現金化できない財産がほとんどの場合には、不在者の財産から支払うことができないため、申立人が予納金を支払うこととなります。

それでは、予納金が必要な場合にはいくらになるのでしょうか?
予納金は主に財産の管理費用と不在者財産管理人に弁護士や司法書士などの専門家が選ばれた場合の報酬に充当するためのものです。

報酬の相場としては月額1万円〜5万円ほどです。
不在者財産管理人の報酬を決めるのは家庭裁判所です。
管理の手間や難易度、終了までにかかる期間などを予想して決定します。

上記を考慮すると、予納金の相場は、20万円〜100万円になります。
なお、手続きがすべて終了した際に予納金に余りがある場合は返還されます。

不在者財産管理人を選んでもらう具体的な方法

ここからは不在者財産管理人の利用を選択した際の具体的な手続き方法について解説します。

家庭裁判所に申立書を提出できる人の資格

申立書を提出できる人は決められています。
利害関係人または検察官の2択です。
それでは、申立人の利害関係人とは誰をさすのでしょうか?

遺産分割協議をしたい他の相続人や不動産の共有者です。
利害関係を証する資料として、共同相続人であることを確認できる戸籍謄本や、不動産の登記事項証明書などを提出します。

検察官は、公益を代表する者として申立権者となりますが相続の場面で関係することは少ないでしょう。

提出先の家庭裁判所は不在者の最後の住所や居所できまる

どこの家庭裁判所に書類を提出するのかは決められています。
まず最初に考えられるのが、不在者の従来の住所地または居所地を管轄する家庭裁判所です。

不在者の住所地は住民票や戸籍の附表で調べます。
なお、家庭裁判所の管轄は裁判所のホームページで確認することができます。

また、不在者の従来の住所地または居所地が不明なときは、不在者の財産の所在地(不動産の所在地)を管轄する家庭裁判所または東京家庭裁判所となります。

 揃える書類は不在者の戸籍、住民票の他に聞き取りした内容の記録

不在者財産管理人選任申立てに必要な書類は次のとおりです。

役所で取り寄せる書類
  • 不在者の戸籍謄本と戸籍附票または住民票・不在者の財産に関する資料
  • 被相続人の戸籍謄本
  • 申立人の戸籍謄本・相続関係説明図または法定相続証明情報
現地調査などで聞き取りして作成するもの
  • 不在である事を証する資料については、前章の「不在を証明するために必要な住所調査と現地調査」をご参照ください。

【参考】不在者の最後の住所地が海外の場合

それでは、不在者の最後の住所地が海外の時はどうすればよいのでしょうか?
このような場合には、外務省宛てに「所在調査申込」を郵送します。
外務省に保有している資料で、不在者の住所が判明するかどうかチェックするための手続きです。

不在者が現地の日本大使館や領事館に連絡先を届出ている場合には、この調査で連絡がつくケースもあります。
連絡先を届出していない場合には、所在が判明しなかったとの回答が送付されますので、これを不在を証する書面の一部として提出します。

不在者が戻るか財産がなくなるまで不在者財産管理人の仕事は終わらない

不在者財産管理人の職務が終わるのはいつなのでしょうか?

不在者財産管理人の仕事は、当初の目的(遺産分割協議や売却)が終わっても終了しません。
不在者の財産を管理するだけでなく、財産目録を作成して家庭裁判所に定期的に報告する義務があります。

管理業務が終了するのは、下記の5つの終了事由のどれかに当てはまった場合です。

  1. 不在者が見つかった場合、不在者に管理財産を引き渡して終了となります。
  2. 不在者の死亡が確認された場合、不在者の相続人に管理財産を引き渡して終了となります。
  3. 不在者に失踪宣告がされた場合、失踪宣告が認められると死亡したとみおなされますので②と同様相続人に引き渡して終了となります。
  4. 管理財産がなくなった場合、不在者の債務や財産管理の報酬や費用を支払い財産がなくなったときに終了します。
  5. 不在者が財産管理人を選任した場合、考えにくいケースですが選任された財産管理人に引き渡して終了となります。

不在者財産管理人の職務が終了すると予納金が精算される

不在者の財産管理が終了した時点で予納金が残っていれば申立した人に返還されます。
予納金が残っていなければ戻りません。
予納金の納付が必要な場合は戻って来ないこと念頭に話を進めるのが安心です。

2,000件以上の相談実績でサポート!

相続登記の義務化って?
相続手続きの優先順位は?
どこまで代行してくれる?
なるべく早く解決したい!
認知症になる前にできることは?

1度の来所で手続きが完了!
他事務所で困難とされた相続手続きも対応可能で迅速な相続手続きをワンストップサービスで提供しサポートします。